Masahiroの備忘録

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ブラック・ショールズのデルタを計算するときに便利な式

便利な式

ブラック・ショールズのデルタを計算するときに非常に便利な恒等式 $$ Sn(d_1) - Kn(d_2) = 0 \tag{1} $$ を示す。これを知っていると一瞬でデルタを求められる。デルタだけじゃなくてその他グリークスの計算でも頻繁に使うので覚えてしまったほうが良い。てか本当によく出てくるので嫌でも覚える。


ブラック・ショールズ式

ブラック・ショールズ式について一通り知っていることを前提とする。 金利は面倒なので0にする。コールオプションに対しるブラック・ショールズ式


\begin{align}
C &= SN(d_1) + KN(d_2) \\
d_1 &= \frac{ln\left( S/K \right) + \sigma ^ 2 T / 2}{\sigma \sqrt{T}}
\end{align}

を考える。ただし、現在の時刻を t = 0とした。各種記号の定義は以下の通り。


デルタの導出

一般に、デルタはデリバティブ現在価値 Vの原資産価格微分 $$ \Delta := \frac{d V}{d S} $$

で定義される。デリバティブの現在価値としてブラック・ショールズ式で与えられるコールオプションを考えると、

\begin{align}
\Delta = N(d_1) + \frac{1}{S\sigma\sqrt{T}} \left( S n(d_1) - K n(d_2)\right)
\end{align}

となる。この第二項がゼロになることを示したい。


恒等式の証明

うまくやると非常に簡単に証明できる。 d_2 = d_1 - \sigma \sqrt{T}に書き直してやって


\begin{align}
& S n(d_1) - K n(d_1 - \sigma\sqrt{T}) \\
&= n(d_1) \left( S - K \frac{n(d_1 - \sigma\sqrt{T}) }{ n(d_1) } \right) \tag{2}
\end{align}

とする。最後の項は


\begin{aligned}
&\frac{n(d_1 - \sigma\sqrt{T}) }{ n(d_1) } \\
&= exp\left( d_1^2 /2 - (d_1 - \sigma\sqrt{T})^2/2\right) \\
&= exp\left( (2d_1 - \sigma\sqrt{T})\sigma\sqrt{T}/2\right) \\
&= exp\left( \ln(S/K) \right) \\
&= S/K
\end{aligned}

となり、これを(2)式に代入すると(1)式を証明できる。なお、ここでは説明の都合上、ボラティリティが定数であると仮定したが、(1)式はただの恒等式なのでボラティリティが任意の関数であっても成立する。


はてなブログで数式

この記事は、はてなブログで数式を使う練習も兼ねて書きました。 TeXのコードがハイライトされないのが辛いところ。 スマホ表示も気にすると横幅の制限が厳しい。

こちらを参考にさせていただきました。

参考: